『真夜中の御茶会にて』始まりの前、終わりの続き。

 

 

 

2020年2月27日から29日まで、不動前のギャラリーにて行われたAtticActForGirl旗揚げ公演 朗読劇『真夜中の御茶会にて』

 

こんな時期ではありますが、たくさんのお客様にご来場いただき無事終演いたしました。

 

ご来場いただいたみなさま、応援してくださったみなさま、誠にありがとうございました。

 

今回の公演に関しては自分が前へ前へと出る役割ではないと思っていたので、役者としてというより脚本演出、主宰、裏方として徹していたのですが、それでも声がよかった、このキャラクターとの掛け合いがよかったなど

お芝居面をみてくれる方がたくさんいらして、とてもうれしかったです。

せっかくなので、今回の作品、公演についてじっくりお話できたらと。

内容は以下です。

 

・脚本担当視点からみる『真夜中の御茶会にて』各キャラクターについて

・『真夜中の御茶会にて』の世界

・演出についてのおおまかなこと、音楽や衣装

・役作りとメイクについて

・イメージソング

ショートショート

・最後に

 

※長いです、とても長い!

 

 

【脚本担当視点からみる『真夜中の御茶会にて』各キャラクターについて】

 

・アリス

初期は敬語キャラでした。かわいくて毒舌で敬語って最強だなって。登場直後のシンデレラとのやりとりも、もとは結構バチバチでした。

 

シンデレラ「あああやり返してえ、コテンパンに徹底的に完膚なきまでにやり返してえ。なんっで黙って掃除してんだよ私は…フェアリーゴッドマザーに助けてもらう前にやり返せばいいだろ」

アリス「うるさ…騒がしい人ですね、これがプリンセスだなんて信じられない。だいたい、自分で解決できるなら王子がいらなくなるじゃないですか馬鹿ですか馬鹿なんですか?現に私は自分自身の力で夢の国から帰ってきましたよ。王子も魔法使いも、自身に能力があれば不要なんです」

シンデレラ「あーはいはい、子供なのにすごいなぁアリスは。子供なのに。頭でも撫でてやろうか」

アリス「…いいえ結構です、あなたはその辺の掃除でもしていてください。すごーくお似合いですよ、灰まみれのエラ」

シンデレラ「次その呼び方したら灰まみれになるのはお前のほうだからな」

(初期原稿より)

 

わりと変わってましたね。もう少し公演用台本に反映してもよかったかも。原作設定からいちばん年下という位置づけで書いていました。末っ子ってなんか大人ぶろうとしがちな気がします。でもふとしたときに少女の部分が垣間見える、みたいな。

もろくて綺麗で硝子のような、砂糖菓子みたいな女の子にしたかったのです。

 

ラプンツェル

平和主義で言葉をそのままの意味で受け取るタイプの子です。ほわほわでロマンに心躍らせる性格はもとの彼女の性格から。

その部分はラプンツェルになっても変わりませんでした。彼女の根本にあるのは「アリスのために」ということだけ。素直で強い感情を持っている彼女の言葉に嘘はありません。

 

「アリスが笑ってくれるなら、彼女の笑顔の理由になれるなら、それでよかった」

「アリスが終わらないことを願うなら、私は決してこの役を降りない」

 

・シンデレラ

ぶっきらぼうで言葉使いが荒く、ただ白雪姫にだけは少し甘さをもっている。互いに互いを求め合い、守りたいと思っている。自分が傷付くことは相手を傷付けることだと知っているから、シンデレラと白雪姫の行動に自己犠牲というものはあまり存在しません。自分と相手、両方を大事にします。

ラプンツェルに近く、自分の感情というものを強く感じています。理性で蓋をし、やりきれない現実に涙する。思えばとても人間らしいキャラクターなのかなと思いました。

 

・白雪姫

プリンセスの中でいちばん「演じる」という術に長けています。これは彼女の感情がとても希薄だったことに起因します。自分、というものがないから、自分ではない誰かを演じることができる。御茶会のときと、アリスのいないときとで雰囲気が変わるのはスイッチの切り替えが恐ろしく早いから。

でも確かに生まれていく自分の感情に戸惑い、悩み、そして受け入れていきます。

 

・???/女王

全員が少し変わったプリンセスという世界の中、男性が女王というのもまたおもしろいんじゃないかと。

(あと、アリスのお話の中で王様ってとても影が薄いんですよね)

絶対的ヴィランとしての一面もありながら、自他ともに認める「完璧」とは程遠い存在です。

それは女王自身がアリス以外の三人と同じ存在だからにすぎないのですがアリスが願った強いヴィランというイメージが、彼女たちに「女王は絶対的な強者」という印象を植え付けています。

そのイメージの植え付け、一種の暗示のようなものは女王自身にもかけられていました。 

 

・+α

本編には登場しませんが、キャラクターたちのセリフにもあるように基本的に登場人物は自由な意思をもって動くことはできません。ですが、セリフ以外のことを言ったり、描かれた以外の行動はできずともラプンツェルのように心をもってアリスや物語をみているキャラクターも存在します。

感情はあれど、物語に関わることはなく、その場を見守っている存在。

お客様全員が、この物語の登場人物なのかもしれません。

 

 

【『真夜中の御茶会にて』の世界】

 

あらためて世界観についてお話させてください。

まず、プリンセスたちは太陽が昇っている間や人間が絵本を読んでいるときに、自由に動くことはできません。日が沈み、誰も絵本に触れていない真夜中にのみ、自身の絵本から抜け出して別の絵本の世界へと移動することができます。御茶会はいつも誰かの絵本のページの片隅で行われている。という設定。

 

すべては巧妙に作られた偽物の世界。すべてアリスの世界にすぎません。

 

御茶会の前に出てくるセリフ、「今晩は白雪姫」「今日はアリス」というのは、その日選ばれた絵本のことを指しています。ページが開かれている最中は、御茶会に参加することはできません。

 

・アリスが選ばれているのにどうして三人は動くことができるのか?

トランプ兵って山ほどいるので、出番が終わったトランプは夢の終わりが近いこともあり、わりと自由に動けます。その後すぐアリスがやってくることからも、三人が集まったときに絵本上でもすでに終盤付近だったことになります。

今日はアリスなのね、というのは恒例の世間話のようなものなので、わかりきっていることでもつい口に出てしまった、という感じです。

 

・キャラクターたちの心と性格の関連性について

アリス以外のキャラクターの感情の強さみたいなものは

ラプンツェル>シンデレラ>白雪姫>女王 となっています。

もとの性格が反映するのもこの順番です。

白雪姫のところで少し触れましたが、感情があればあるほどプリンセスになったときと素の自分に変化がつけられない=嘘が吐けなくなります。

だからラプンツェルは嘘を吐き続けることを嫌い、

シンデレラは嘘を吐くことに迷い、

白雪姫は嘘を演じることに長け、

女王は嘘に罪悪感がありません。

 

・こぼれ話

初期、かなり迷走していた時期にメンバーの中山由佳梨ちゃんに助けを求めたところ、かなりやさしくふんわりと、「全員が主人公みたいな展開のほうがいいな」みたいな感想をいただきました。

当初は今と違い、真夜中の世界に疑問を感じ、これはすべて夢なんじゃないかと恐れ暴走するアリスをみんなで救うというような感じのお話でした。アリスがザ・ヒロインですね。冒頭にもあったようにかなり迷走していたので、ここからどうしよう…と思っていたときにその意見をもらって、どんどん筆が進んで。そして今回の『真夜中の御茶会にて』が形作られました。

なのではじめは、三人のプリンセスはただのちょっと変わったプリンセスだったんですよ。ちなみにこのあとURLをはっているショートショートの中の、アリスの物語にある会話は初期原稿をもとにしています。幸せになるための物語。

 

この話を書き始めたきっかけについては長くなるので割愛しますが、ざっくりいうと自分の居場所というものについて考えていたからです。ちょうどふらふらしている時期だったので、それゆえの楽しさも不安もあって。必要とされたい、自分の居場所がほしい。できることなら、ほんとうの自分のままで。それが『真夜中の御茶会にて』のはじまりです。

 

 

【演出についてのおおまかなこと、音楽や衣裳】

 

狭い空間でのお芝居なので、極力出入りをなくせるようにしました。

顔を下げているのは眠っている、もしくは身動きできない状態。

アリスとラプンツェルが自身の思いを吐き出すモノローグシーンでは、思いあっているのに交われない関係性を出すため立ち位置を前後に。

シンデレラと白雪姫が二人きりで少し素を出すシーンでは、背中合わせにすることでほんとうのことを言いあえるようにしました。

ラスト、女王が去り際にプリンセスたちのいた場所を振り返ることであの御茶会に5人目の参加者が現れる日があるかもしれないという希望になるように。

 

また、お客様も出入りする前方の出ハケ口は基本的に女王様専用、もしくは女王様のもとへ訪れるキャラクターが使う場所でした。

唯一女王が奥の出入り口から出てくるのは、戻りかけた日常にひびを入れるような登場シーンのみです。

 

音楽について。基本わたしはノータッチでした。

このシーンだけでしか使わないのはもったいないからどこか別のシーンにも入れようよ、くらいしか口出ししてません。

あとはエンディングの選曲ですね。

ビスケットとチョコレートで楽曲が違います。どちらかにしようと悩んでいた二曲なのですが、???役の二人があんなに個性的に演じてくれたので同じ曲じゃなくてもいいかもしれない、と思いまして。

 

ビスケットチーム

『ニア』 ‐ 夏代孝明

ココロないキミに問いかけたのは

キミの手が僕よりもあたたかかったからさ

 

チョコレートチーム

『失想ワアド』 ‐ じん

いつか誰かとこの世界で

笑い合えたらちょうど良いなぁ

 

衣裳についてもほとんど何も言っておりません。

色味は白と黒、差し色に赤ならいれてOKというのだけ伝えました。

これ、来てくれた先輩が気付いたよと言ってくれたのですがアリス以外のキャラクターはトランプだから、というのに起因しています。

当日制作(受付)さん、音響さんもお洋服は白黒でお願いしますと伝えてありました。

メイクや衣裳についても各々に任せてありましたので、機会があればぜひ裏話など聞きたいですね。

 

ちなみに舞台美術に関しても丸投げです。御茶会する場所、その前にモノローグができるスペース、横に女王様が座る場所をつくってください。あとはお任せします。以上です。笑

はちゃめちゃにかわいい舞台セットの中でお芝居ができて、毎日るんるんでした。

 

 

【役作りとメイクについて】

 

これはわたし個人の役作りの話なので、それが正解というわけではありません。

 

・シンデレラ

ビスケットチームのプリンセス4人は当て書きでした。短気で泣き虫なシンデレラ。葛藤と困惑と変わっていく様がなかなかに難しく。

わたしのシンデレラは、目を背けない子です。こわいこと、嫌なことを見つめます。どんなに不安でも。

ドレスアップ前のボロボロなシンデレラをイメージしていたのでリップは薄いピンク系で。アイメイクはあまりいじる時間がなかったので白雪と共通ですが赤とピンクとラメ系、アイラインもはっきりめにしました。

髪型は一つ結び→くるりんぱ→三つ編みにしておだんご。

Hash2に出演した際の華陽院さまヘアーにしました。

 

・白雪姫

感情がプリンセスの中で最も希薄。

確かに存在する自分の心をやっかいで邪魔だと言いながらいとおしいとする。

そんな彼女は目を背ける子。とくに女王の前では、視線は常に目線より下にあります。そして笑う。人形みたいにつくられた、本心じゃない笑み。物語の終盤では自身の感情にしっかりと向き合い、前をみる変化を。後半はよく声を荒げますし、困ったように笑います。それが彼女の笑い方。

白雪姫って内巻きボブのイメージ強いのですが時間と技術的関係でおろした髪の毛をゆるく巻くことしかできませんでした。ざんねん。

 

 

【イメージソング】

 

公演台本や各キャラのショートストーリーを書いているとき聴いていた曲たちです。雰囲気だったり歌詞だったり。

 

アリス

『至上の空論』- ドラマストア

『晴天前夜』- ウォルピスカーター

『アマドール』- 須田景凪

 

ラプンツェル

『例えば、今此処に置かれた花に』- 164

『orion』- 米津玄師

『バッドエンドの映画は嫌いなんだ』- *Luna

 

シンデレラ

ドラマツルギー』- Eve

『アウトフォーカス』- Half time Old

『さよならユートピア』- Organic Call

 

白雪姫

『命ばっかり』- ぬゆり

『革命のマスク』- 魔法少女になり隊

『泣かないあなたの守り方』- 傘村トータ

 

女王

『悪魔の踊り方』- キタニタツヤ

『キルマー』- 煮ル果実

『night walkng』- シロとクロ

 

真夜中の御茶会にて

『波に名前をつけること、僕らの呼吸に終わりがあること』- キタニタツヤ

『Dolly』- 須田景凪

『準透明少年』- ヨルシカ

 

 

ショートショート

 

台本を買ってくださった方の特典に~と書いていたんですが、あの、本番前、裏方業務がめちゃくちゃ忙しくてですね(本音)

ただ日の目をみないのもかなしいので、アップしてみました。誰でもみれるはずです。はじめて使いましたのでどきどきです。

5人分ありますのでよかったら。

 

https://www.short-short.com/users/965

 

 

【最後に】

 

あまりに長すぎて、書いてる最中に安堵からか体調を崩したりもしましたが、なんとか生きております。

 

演劇というものをはじめて恐らく4年くらいになるのですがはじめて舞台に立ったあの日から、同じことを思います。

演劇はひとりではできないということ。

たくさんの人がひとつのものをつくる。

そのためだけに生きている。

役者はみえない支えを、思いを全部背負って立っている。

立たせていただいている。

 

そして最近、というより今回の公演を通して、至極当たり前のことに気付かせていただきました。

お客様がいなければ、演劇は死んでしまうということ。

お客様がみてくださるから、演劇ははじめて完成するということ。

 

時期も時期でしたが、予想より遥かに多くのお客様にご来場いただき、また全公演、開演予定時刻丁度にはじめることができました。

これってほんとうにすごいことなのです。

規模の大きい舞台ですら時間通りにはじまらないことは多々あります。

小劇場では残念ながら日常茶飯事です。

時間通りにご来場いただいたお客様の、貴重なお時間を消費してしまう。時間を消費するというのは命を消費することだと、以前共演した方がおっしゃっていました。

今回をそれを回避することができたのは素晴らしいスタッフさんの、そして何よりお客様のお力と言わずなんと言いましょう。

上演中携帯が鳴ることもなく、お喋りをする方も恐らくおらず、面会時間も伸びるどころか時間に余裕をもって終了できました。

ほんとうに、素敵なお客様に恵まれました。幸せです。幸せでした。

 

同じ公演というのは、ありません。

同じ芝居というのも存在しません。

 

わたし個人の話をすれば、

早川琴音、22歳の今しかできないこと、

今だからできること。

それをお届けできたんじゃないかなと。

こと芝居においては正解も満点もきっとないので、

現状に満足はしていませんし、

それを次につなげていくしかありません。

これからもいろんなことを経験して吸収して

演劇の世界で息を吸っていたいなぁと思うばかりです。

 

長くなりましたが、これにてほんとうにおしまいです。

わたしはわたしのハッピーエンドを目指して。

すべてのご縁に感謝を。

 

ありがとうございました。

 

 めでたしめでたし。

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